“残業代1.5倍”なのに“残業削減” 一見矛盾した高知県庁の働き方改革に専門家指摘「効率化」の弊害
2025年10月23日(木) PM7時33分
県が打ち出した働き方改革の方針。「残業代を減らすために残業代を増やす」という方針は一見矛盾しているように感じます。残業の支給率を上げることで全体として残業代を圧縮できるという考え方なんですが、少しわかりにくいこの改革、詳しくみてみましょう。
県は9月、働き方改革を進めるため東京の株式会社ワークライフバランスと協定を結びました。働き方改革に関する協定は初めてで、自治体として全国初の取り組みが注目されました。それが時間外勤務手当、つまり残業手当の割増率を2026年度限定で引き上げる取り組みです。
県総務部行政管理課・東崎正哲 課長補佐:
「時間外に対する意識を変えるのが大きな目的の1つではあります」
長時間労働是正のため職員の「時間外」に対する意識改革・変化を醸成していくとしています。
県総務部行政管理課・東崎 正哲 課長補佐:
「勤務時間内にしっかり業務をこなす意識を植えつけるためにも、時間外の割り増しを行ったっていうのはあります」
この県の取り組みに対し、労働社会学が専門で働き方評論家の千葉商科大学・常見陽平准教授はー
千葉商科大学・常見陽平 准教授:
「残業代1.5倍っていう数字だけが1人歩きすると残業手当を非常に優遇してるみたいに見られると思うんですけれども、これによって残業を抑制することを期待してるってことに理解するべきかなというふうに思います」
一方で効率化による弊害について指摘します。
千葉商科大学・常見陽平 准教授:
「あたかもこの残業が職員がサボってるからだとか、効率が悪いからだみたいな視点で見てはいけない。効率化しちゃいけない部分とか、質を絶対に保たないといけない部分もあると思うんですね」
ほかに時間内で終わらせないといけないプレッシャーや、一定の労働時間あたりの仕事量が増えることによる職員の健康リスクもあるといいます。
千葉商科大学・常見陽平准教授:
「どの部門にどれだけ負荷がかかってるのか。それは労働時間だけじゃないですよ。住民との対応の中でのハラスメントっていうのは非常に重いんですよね。そういった事態とか把握してるのかどうかっていうのはやっぱり問われますよね」
残業手当の割増率を2026年度限定で引き上げる条例案は9月県議会で全会一致で可決。2026年4月1日から施行されます。
決められた時間の中で効率的に成果を上げることを目標とした県の働き方改革。時間内で終わらせるプレッシャーから逆にサービス残業を誘発してしまうという指摘に対してはー
県総務部行政管理課・東崎正哲 課長補佐:
「もちろんサービス残業というのはあってはならないと思ってますので、そうならないように取り組みを進めていくんですけども。モデルチームで働き方改革を行っていくとか、そういった取り組みを実践的に行いながら、実際、時間外も減らしていくというのも合わせてやっていくってのが肝かなと思ってます」
県は残業代の割増率を引き上げる一方で、短時間勤務職員を採用するなどマンパワーの確保も行い全体として残業時間の削減を目指します。
県総務部行政管理課・東崎正哲 課長補佐:
「時間外割り増しがあるから働きたい、働けたら働いていいよとかいう方向は全然考えてなくて、むしろその勤務時間内でしっかり成果を出す、仕事を終わらせる方向に考えてもらえるように研修等でも打ち込んでいくっていう感じはありますね」
残業代1.5倍だけに目がいきがちですが、県全体の取り組みとして職員の残業時間が減るのかどうか。社会実験も兼ねた施策は”薬“となるのか県庁の改革に注目です。