別名「森のキャビア」《フィンガーライム》への挑戦!高知の”かんきつ王子”は高校生
2025年1月9日(木) PM7時50分
高知県土佐市に農業にいそしむ高校生がいます。その名も「かんきつ王子」。周りの大人が思わず手助けをしたくなる“王子”の熱い思いとは。
寒波の影響で、日本各地で冬景色が広がる中…。南国・高知では、「かんきつの王様」ブンタンが収穫の最盛期!
長尾さん:「豊作です!」
人呼んで「かんきつ王子」。地元の農業を盛り上げようと奮闘中です!そんな彼が青春を捧げる高級食材「森のキャビア」とは?土佐の農業を変えるかもしれないホットな高校生の挑戦を追いました。
県立春野高校は、普通科目だけでなく、農業をはじめとした専門分野の教育にも力を入れています。長尾秀一郎さんは、この学校に通う3年生。実は長尾さん、地元の新聞にも、「かんきつ王子」として紹介されている有名人なんです。
そんな彼が育てているのは…
長尾さん:「こちらになります」
枝からぶら下がった不思議な実。一見すると豆のようですが、その正体は。
長尾さん:「フィンガーライムです」
フィンガーライムは、オーストラリア原産の柑橘類。実の中には、キラキラと輝く小さな果肉がぎっしり詰まっています!気になるお味は…
記者:「おぉ すっぱい!」「でも後味、結構爽やかな」
長尾さん:「フィンガーライムって、いろんな品種があって全部酸味は強いんですけど、自分は酸っぱいもん好きやし、いろんな香りが味わえるのがめっちゃ好きですね。」
サクサクとした歯触りと酸味で、料理との相性もピッタリ。別名「森のキャビア」と言われ、スーパーなどでは滅多にお目にかかることのできない”高級食材“なんです。
長尾さん:「たくさんの人が知っている作物とか、たくさん作られている作物を作りたいなってあんまり思わんくて。やっぱりみんなが知らない、自分も知らないものを作った方がワクワクするし、届けたときに喜んでもらえるものの方がやりがいって感じるんですよね。」
露地での栽培にチャレンジするも、冬の寒さに勝てず、苗木は全滅。落胆する長尾さんを救ったのは。
長尾さん:「このハウスも、地域の方からタダで借りているハウスで、ハウスの張り替えも、自分たちで頑張ってやりましたね。」
地域の大人たちが、長尾さんを助けたいと動き出したのです。
持ち主・市原氏:「(農家だった)父が亡くなってからほとんどできてなくて、更地みたいな感じになっていました。若い子が農業に興味があって「やる」っていうんだったら是非貸したいなと思って、長尾君に、「ここもう自由に使っていいよ」っていうことにしたんですよ。」
市原さん、実はこの日がフィンガーライム初体験。
市原さん:「すっぱい!」(笑い合う二人)
自宅からビニールハウスまで送り迎えをしてくれるのは、祖母の節子さん。長尾さんが農業に興味を持ったのは、祖父母が持つ山でみかんの木を植えたことが始まりでした。
祖母・節子さん:「(農業をやってみたいと聞いて)びっくりしました。ほんとに何を考えちゅう、この子はと思って。やれるわけないき、やってつまづいたらすぐやめるわと思って、もっと軽く考えてたら、ますます農業が好きになりましたね。」
実は、長尾さんがフィンガーライムに注目した理由が、もう一つあるんです。それは…
「温暖化」。近年の温暖化によって、農業にも大きな影響が出ています。高知県の香南市でも、長引く猛暑の影響などにより、2024年は、露地栽培のみかんが大不作となりました。
長尾さん:
「今、高知でも南の海沿いの方だとバナナが路地で実がなっているのを見ることもできるし、その面フィンガーライムは高知の今の気候に向いていると思うし、これからの作物として適しているのではないかなと思っています。」
フィンガーライムは「かんきつ王国・高知」の新たな希望になるかもしれません。
12月。高知の山では、黄色く実ったブンタンが輝きます。
同級生:「いーやっ」(かけ声)
同級生たちとともに、朝から収穫作業に大忙し。
同級生:Qきょうのバイト代は?「俺らのバイト代はコレっす!10キロと昼飯タダ。」
実はこのブンタン、以前からよく知る農家さんから、長尾さんが引き継いだものなんです。
長尾さん:
「やっぱり自分自身がブンタン食べるのめっちゃ好きやし、農家さんが減ってしまうのも悲しかったんですけど、それよりも師匠、”熊ちゃん”って言うんですけど、熊ちゃんがブンタンやめてしまうのが1番悲しかったですね。もうその味食べれんなるやんみたいな」
高齢化が進む農業にとって、次の世代への「事業継承」は重要な課題なのです。
森熊敬さん(師匠):
「84歳になったもんで、もうこれ山は無理だということで、その時ちょうど長尾君がやってくれるということで、もううれしくて、即(OKの)返事をしました。」
妻・美和子さん:
Qお孫さんみたいな気持ち?「孫以上です」
地域の期待も大きくなる中、長尾さんにプレッシャーはないのでしょうか?
長尾さん:
「それがよく聞かれるんですけど、全然ないんですよね。なんかほんとに「好き」って言うだけでやってるんで、逆に色々心配してくれるんですけど、好きでやってます。自由に。」
2025年は、県内の大学に進み、さらに農業の知識を深めたいという長尾さん。長尾さんの
熱い”かんきつ愛”は止まりません。