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News- 高知のニュース

「最下位脱出」から都大路36回連続出場へ 高知・山田高校陸上部“駅伝物語”

高知県内のスポーツを様々な角度で紹介するコーナー「こじゃんとスポーツ」。今回注目するのは、香美市にある県立山田高校の陸上競技部です。

県内駅伝の強豪が誕生したのは39年前。高知県のプライドをかけたプロジェクトがありました。今年(2025年)も“おらんく”の看板を背負って全国で戦うことを目指している選手たちを取材しました。

蒸し暑さが残る放課後、トラックを懸命に駆けている山田高校陸上競技部の選手たち。3年生から1年生までの10人が、寮生活を送りながら練習に励んでいます。

駅伝の強豪校として知られ、師走の京都・都大路を駆け抜ける全国高校女子駅伝には第1回から36回連続で県代表として出場し続けています。

指導に当たるのは、この春に安芸高校から山田高校に赴任してきた下村和秀監督です。2025年3月まで20年以上に渡ってチームを率いた永田克久監督から部を引継ぎました。

山田高校陸上競技部 下村和秀監督:
「一言で言えば、荷が重いなと(笑)」

今から39年前、高知県は全国都道府県対抗女子駅伝で3年連続最下位という「どん底」の状態でした。汚名を返上しようと立ち上がったのが、かつて高知農業高校を全国4位に導いた駅伝界の第一人者・有澤駒雄さんです。有澤さんは当時、自分が校長を務めていた山田高校の陸上競技部を強化することを決意。体育顧問の浜田三男さんに監督を依頼しました。

山田高校陸上競技部・元監督 浜田三男さん(84):
「なんとか最下位を脱出するように手助けを私らがせないかん、ということでやり始めた」

浜田さんは自宅の庭に、自費で1000万円以上をかけて2階建ての寮を建てました。以来10年以上に渡り、多い時で15人もの生徒たちと生活を共にして指導に心血を注ぎます。

浜田さんの自宅で寮生たちとお花見会をした日の、笑顔あふれる写真には、奥でマイクを握るのが妻の陽子さんの姿があります。

山田高校陸上競技部・元監督 浜田三男さん:
「一番苦労をかけたのは女房。私は陸上のことだけをやって楽しゅうやりよったけど、女房はそうはいかいで。買い出しから全部やってくれて。女房がおらざったらできてない」

妻の陽子さんは、食事の準備をはじめ生徒の母親代わりとなって夫をサポートしました。

妻・陽子さん:
「若かったのと、何も知らなかったのでできたと思います。けどみんな可愛らしい生徒でね」
浜田三男さん:
「親も良かったし生徒も良かったき、できたがでしょうね」

高知の駅伝を何とかしなければ…という思いに県内の陸上関係者も動きだし、見込みのある中学生を紹介するなど支援の輪が広がります。山田高校の駅伝強化は県を挙げての目標となり、陸上の拠点校に指定されました。

浜田さんの監督就任から3年後には、全国女子高校駅伝の第1回大会で12位と大健闘。2001年に浜田さんの後を引き継いだ永田克久・前監督の時代には、全国7位と8位2度の入賞を果たしました。さらに、2025年3月に卒業した穂岐山芽衣さんは2024年のインターハイ1500メートルと国民スポーツ大会の3000メートルでともに日本人トップの3位入賞を果たし、日本陸上界の歴史に名を刻みました。

現在の山田高校には、当時、浜田さんの自宅の寮で生活をした選手の娘がいます。1年生の新谷恵麻選手です。7月24日から広島で開催されるインターハイに、3000メートルと1500メートルで出場します。駅伝を始めたきっかけはもちろん、母親です。

山田高校1年 新谷恵麻選手:
「憧れっていうか、負けたくなくて始めました」

駅伝選手だった母親の活躍を祖父から幾度も聞かされるうちに、自分も都大路を走るのが目標になりました。

山田高校1年 新谷恵麻選手:
「今まで卒業した山田高校の先輩のためにも自分たちのためにも(たすきを)つなげたい」

山田高校陸上競技部 下村和秀監督:
「高知県の女子の長距離界をなんとかせないかんということで立ち上げた場所になりますので、私も精一杯頑張って次へつなげるように、そこまでは頑張りたい」

選手たち:
「都大路ベスト16以内目指して頑張るぞ!おー!」

山田高校には、新谷選手のライバルで今年の県体1500メートルを制した1年生、東野寧音選手もいます。さらに24日からは穂岐山芽衣さんの妹・実結選手が3000メートルに、3年生の井上和奏選手が競歩でインターハイに出場します。

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