庶民が風刺する《幕末の世相》坂本龍馬記念館で《錦絵》展示 裏に深い意味がある作品も【高知】
2024年1月31日(水) PM7時35分
高知市の高知県立坂本龍馬記念館で開催中の企画展『錦絵にみる幕末維新』。江戸時代中期以降に描かれた色彩豊かな錦絵32点が展示されています。
人気役者のブロマイドなど娯楽として親しまれた錦絵。一方で事件をいち早く伝える瓦版の役割もあり社会情勢を遠回しに批判した風刺画が多いのが特徴です。
川辺世里奈アナウンサー
「こちらは戦を描いているのですが、戦っているのは魚と野菜です」
歌川広景の「青物魚軍勢大合戦之図」は、安政5年(1858年)の世相を映し出しています。
高知県立坂本龍馬記念館 河村章代 学芸課長
「(感染症)コレラがはやっていて、コレラにかかりやすい魚とかからない青物野菜を戦わせている構図。実はそれだけではなくて、裏に深い意味があるんです」
それは13代将軍・家定の後継者を巡る対立、いわゆる「一橋派」と「南紀派」の争いです。幕府の家臣らが支持する“守りの”南紀派が野菜軍なのに対し、地方の有力藩主などで構成された“攻めの”一橋派がコレラを媒介する魚軍に例えられています。ちなみに一橋派についていた土佐藩主の山内豊信は、魚軍の“カツオ”で表されています。
大阪から
「痛烈に皮肉を込めてといいますか、そういう手法で、より読み手にインパクトを与えようというところがおもしろい」
260年以上続いた幕府が倒れ、薩長中心の新政府軍が江戸を占拠するとこんな風刺画が登場します。料亭での宴会を描いた歌川広重の「当世長ッ尻な客しん」です。
門に書かれた「東楼」とは江戸城のこと。新政府軍の土佐・長州・薩摩藩士が居座り、旧幕府側の藩士は中に入れずにいます。女将はほうきに雑巾をひっかけ「早く帰れ!」とまじないをかけているそう。江戸の庶民にとって新政府軍が“迷惑な存在”だったことが分かります。
高知県立坂本龍馬記念館 河村章代 学芸課長
「庶民が幕府をどのように捉えていたか感じながら、ご覧いただいたらおもしろいと思います。細かいところまでじっくりご覧ください」
企画展『錦絵にみる幕末維新』は、坂本龍馬記念館で4月7日まで開かれていて、期間中3回学芸員による解説が行われます。