美人画に注目!「昭和のキャバレー王」が集めた名画展 高知県立美術館【高知】
2022年2月10日(木) PM3時00分
県立美術館で開催中の「昭和のキャバレー王」が集めた名画が楽しめる企画展。きょうは「美人画」に着目してご紹介します。
潤んだ目でこちらを見つめる女性。左手の薬指にはダイヤモンドの指輪が輝いています。戦前の日本洋画界を席巻し、美人画の名手と名高い画家・岡田三郎助が明治41年に描いた「ダイヤモンドの女」です。
県立美術館では東京都出身の実業家・福富太郎さんが生前に集めた日本画や洋画など80点を展示しています。1960年代から70年代にかけての高度経済成長期に全国にキャバレーを展開し「昭和のキャバレー王」の異名で知られた福富さん。日本近代美術に惚れ込んだ収集家の一面を持ち、画家の知名度に縛られず自分の眼を信じて作品を集めたことから”戦後最高のコレクター”と称されています。
福富コレクションの最大の特徴がー
企画展監修者・美術史家:山下裕二さん「一番たくさんあるのは妖艶な女性像。これから心中する男女を描いているものとか。おくれ毛だったりうつろな目だったりそういうものが特にお好きだったようです。」
明治から戦前の時代を懸命に生き抜いた女性の「生活感」や「内に秘めた感情」が伝わる作品を好んで集めたといいます。心中する男女を描いた屏風「道行」について福富さんは「画廊もこの不吉な絵を引き取るのは私くらいと思い持ち込んだのだろう」と回顧しています。(北野恒富「道行」大正2年頃)
企画展監修者・美術史家:山下裕二さん「黒目の下がかなり開いていて足の指見てください。微妙に反り返っていてほんのりと薄紅色が差してあって。二人の不吉な運命を暗示している福富コレクションの中でも最もドラマティックな絵」
こちらは京都美人画の大成者で女性初の文化勲章を受賞した上村松園の「よそほい」(明治35年頃)です。女性画家ならではの視点で髪飾りや着物の帯が繊細に描かれています。福富さんは帯を結ぶ母を振り返る娘のまなざしを見て、女手一つで育てられた松園の「母を慕う思い」が生んだ絵と称賛しました。
企画展監修者・美術史家:山下裕二さん「それぞれの作品を見ながら福富さんと対話しているような気持ちで(絵と)接していただければと思います」
企画展は県立美術館で3月21日まで開かれています。