映画『宝島』アメリカ統治下、沖縄の“知られざる歴史”とは 『龍馬伝』手がけた大友監督が高知で語る
2025年9月18日(木) PM7時37分

9月19日公開の映画『宝島』。メガホンを取ったのは大河ドラマ『龍馬伝』や『るろうに剣心』などで知られる大友啓史監督です。「第二の故郷」とも言える高知を久しぶりに訪れた大友監督に最新作の見所などを伺いました。
さんさんテレビを訪れたのは大河ドラマ『龍馬伝』の演出で高知とは深いつながりのある映画監督・大友啓史さんです。
大友啓史監督:「ただいまという感じでございます」
最新作『宝島』について熱く語りました。
映画の舞台は太平洋戦争後本土復帰前の沖縄。理不尽と暴力があふれる時代を生き抜いた若者たちの姿を壮大なスケールで描きます。米軍の基地で突然消息を絶った親友を探すため刑事になった「グスク」を妻夫木聡さんが、グスクの幼なじみで消息を絶った恋人を待ち続ける女性「ヤマコ」を広瀬すずさんが演じます。
失踪した兄を追い続ける「レイ」を鬼気迫る演技で魅せるのは窪田正孝さん。そして、「グスク」「ヤマコ」「レイ」の3人が慕い続けるコザの英雄「オン」を演じるのは永山瑛太さんです。物語のカギを握るこの「オン」が率いていた集団、それが「戦果アギヤー」です。
大友監督:「結構普通の行為だったみたいですよ」
映画『宝島』で描かれる「戦果アギヤー」の若者たち。いったいどんな存在だったのでしょう。
大友監督:
「子どもたちが最初は基地の中に忍び込んで、鉄くず拾ったりちょっとした薬きょうを見つけてきて、それを集めて自分の小遣いにするみたいな行為だったらしいんですけど、それがどんどん高じて生活必需品を基地の中から盗んでくるみたいなことがかなり一般化していたみたいです」
突然姿を消した英雄「オン」を巡り、3人の男女は沖縄が背負った「時代」に翻弄されていきます。大友監督はこの本土復帰前の沖縄を描きたかったと言います。
大友監督:
「僕は朝ドラ『ちゅらさん』を『龍馬伝』の前にやってまして。国仲涼子さん演じる『恵里』っていうのが主人公で、(本土)復帰以降のパラダイス的感覚で沖縄をとらえるというか、癒やしを与えてくれる場所というようなことをベースにして『ちゅらさん』っていうドラマを作ってたんですけど、なんとなくそれを撮ってるころから、(本土)復帰前の沖縄も描かないと、沖縄とちゃんと向き合ったことにならないんじゃないかという感覚をずっと持ってて。2018年に『宝島』という原作を見つけて、これこそ僕がやりたかったものだと」
大友監督が主役に抜擢したのが、2006年に沖縄を舞台にした映画『涙(なだ)そうそう』で主役を演じた妻夫木聡さんです。
大友監督:
「最初に妻夫木くんに会ったら、妻夫木くんが『絶対やりたい』って言ってくれて」
しかし、映画はコロナ禍で2度にわたり製作が中断。ようやく撮影にこぎ着けるまでに6年という月日を要しました。
大友監督:
「中断して6年の間もずっと彼は待ってくれたんですよね。すごく心強かったですよね」
映画の舞台は戦後、アメリカ統治下の沖縄。1950年代の街や米軍基地の再現には苦労したといいます。
大友監督:
「やっぱり基地をどういうふうに撮影するかというのはひとつの心配事で」
基地に忍び込んだ「戦果アギヤー」が米軍に追われるシーン。もちろん基地内での撮影は許可がおりませんでした。
大友監督:
「空港みたいな滑走路は南紀白浜(和歌山)でとか、いくつかのロケーション組み合わせて、全体で基地に見えるようにという工夫をしてますね」
映画のクライマックスは1970年に実際に起こった『コザ暴動』のシーン。米兵が起こした事故を発端に地元民の怒りが爆発。コザの街が燃え上がります。
大友監督:
「いろいろ虐げられてる、不条理なこともたくさんあったし、怒りの感情だけで暴動が起きたと思われがちなんですけど、沖縄の人たちの怒りだけではない。俺たちもここで生きてるんだっていういろんな叫びが混じってたように思うんですよ」
妻夫木さん演じる「グスク」の叫びが胸に刺さります。
大友監督:
「あの時代に近づくためのドキュメント的な撮り方というかな、一人一人が思い思いの感情をぶつけてもらって、その中にグスク役の妻夫木くんを放り込むっていう演出をしたんですよね。彼がどういう感情をグスクっていう人物がどういう感情を表すのか、それで最後にあの叫びが出てきた」
コザ暴動の夜、若者たちは英雄「オン」失踪の謎にたどり着きます。秘められた「英雄」の真実とは。
大友監督:
「同じ日本人ですからね。あの時代どういう思いをしていたのか。今でも基地の7割を沖縄に負託して、それで戦争の時代は本土の防衛の盾になって、沖縄県民の4人に1人が亡くなったという土地ですから。そこで何が起きたかっていうことをやっぱり知らなきゃいけないんじゃないかと思うんです」
大友監督:
「私の最新作『宝島』ができました。9月19日公開。ぜひ劇場の方でご覧ください。よろしくお願いします」
コロナ禍で撮影が延期となるなど、危機を乗り越えて完成した映画『宝島』。戦後80年のこのタイミングでこそ見るべき映画と言えそうです。映画「宝島」は9月19日公開です。