スーパーの魚に異変!高知のシラス&ブリが品薄…背景には過去最長《黒潮大蛇行》
2024年12月12日(木) PM7時58分 <12月13日 PM12時23分 更新>
高知の名物「シラス」が歴史的な不漁となり価格が高騰しています。さらに、スーパーでは冬の鍋を彩る土佐沖のブリも品薄に。不漁の背景には海の異変がありました。
県東部に位置する安芸市の安芸漁港です。1年を通してシラス漁が盛んに行われています。しかし、近年の漁にはある異変がー。
ベテラン漁師:
Q.シラスは
「とれん。今年は余計とれない心が折れた。やる気もゼロ」
40年間シラスを水揚げしてきた女性はー。
「ずーっととれない」
Q.これだけの不漁は
「初めて。生活が大変」
県水産試験場によりますと県内の主な漁港4か所で2024年、水揚げされたシラスは平年のおよそ3分の1にあたる299・4トン。これは、統計を取り始めた1985年以降過去2番目に少なくなりました。(1番は1999年231トン)
安芸漁港では船を出しても全くとれない日が続く中、燃料の高騰が追い打ちをかけます。
女性:
「漁師が子供を育てていくにはこういう状況が続くと厳しい」
シラスの不漁によりセリの落札価格は高くなり業者からは悲鳴の声がー。
業者:
「相場が上がって原価が上がるから売れない」
「スーパーもしんどい飲食店も」
香南市のシラス加工販売業者土佐角弘海産です。地元の漁港から仕入れたシラスを釜湯でしたり天日干しにしたりして主に関東や九州に出荷しています。しかし
土佐角弘海産・北垣博則社長:
「この3年間ずっとシラスが減少している現状。スーパーや小売店に出す量も確保できない確保できなければ売り上げも上がらない」
資材や運送費の高騰もあり2023年と2024年の秋に出荷価格の値上げに踏み切りました。
土佐角弘海産・北垣博則社長:
「シラスはものによっては落札価格が2倍近い金額になっている。インフレの世界になってきているのでスーパーに並べても売れ行きが悪くなる非常に悪環境になっている」
ここで5年前から毎週土曜日に販売しているシラス丼です。どろめ汁がついて500円でしたが段階的に値上げし今は682円となっています。
値上げの波はスーパーにも。高知市のサニーマート山手店ではシラスの不漁により「ちりめんじゃこ」が2022年に比べ15%~20%値上がりしています。
客:
「おひたしとかにじゃこを入れていたが今は入れない。高い」
水産バイヤー歴30年の山中さんはー。
サニーマート水産担当・山中道春さん:
「ここまで水揚げがないのは過去にない。ちりめんじゃこが安定して毎日届けられるか非常に見えにくい状態になっていて困っている」
シラスだけでなく室戸市のキンメダイも歴史的な不漁にー。さらに、土佐沖でとれる天然ブリの漁獲量も減り店頭には県外産が並んでいます。一方で、例年より仕入れが増え日によってはお買い得になるという魚がー。
サニーマート水産担当・山中道春さん:
「キハダマグロが今年例年より水揚げが多い。主に和歌山とか土佐沖でとれるキハダマグロを販売している」
バイヤーの山中さんは近年、市場に並ぶ魚に異変を感じ取っていました。
サニーマート水産担当・山中道春さん:
「例年の入荷データが参考にならない旬の時期もずれているしいつどんなタイミングでどんな魚が揚がるか非常に読みづらくなっている」
「その時によって逆に普段揚がらない魚が揚がる」
海の異変の背景には「黒潮大蛇行」と呼ばれる現象がー。スタジオで詳しく解説します。
【スタジオ解説】
玉井新平アナウンサー:
まず県内4つの漁港におけるシラスの水揚げ量を見ていきましょう。2015年は1327トンありました。以降、だいたい1000トンを超えて安定的に推移。
しかし、おととし(2022年)466トンと急激に減少し、2023年も不漁に。2024年は11月末の時点で299トンと過去10年で最も少なくなる見込みです。
この原因について県水産試験場に聞くと《黒潮大蛇行》というキーワードが浮かび上がってきました。
日本の南には「暖流黒潮」が流れています。シラスの親・イワシが三陸沖から黒潮の内側を通って房総半島、紀伊半島沖を通過し高知沖で産卵していました。
しかし2017年から海の環境に変化が起き、黒潮のルートが大きく変わるように。これを《黒潮大蛇行》と呼びます。
黒潮がこれまでのイワシの通り道をふさいでしまい、イワシは関東の沖合で産卵して三陸沖に戻るように。このため、これまで高知沖で産卵していたのが、できなくなってシラスが減りました。
川辺世里奈アナウンサー:
高知沖ではシラスだけでなくキンメダイやブリも不漁なのはどうして?
玉井新平アナウンサー:
《黒潮大蛇行》により食物連鎖や餌場魚の回遊ルートが大きく変わりました。これが様々な漁に影響を与えていて、いつも捕れる魚が捕れなかったり逆に捕れなかった魚がいきなり豊漁になったり、こういう現象が全国で起きています。
川辺世里奈アナウンサー:
キハダマグロは今年(2024年)豊漁ということでしたよね。今後は、どうなりそう?
玉井新平アナウンサー:
《黒潮大蛇行》は珍しい現象ではありませんが2017年から7年あまり続き、これは観測史上最長です。《黒潮大蛇行》は年明け以降も続き、県水産試験場は全国的に漁の異変がしばらく続くとみています。